JT-60、JT-60U、JT-60SAは何が違う? 装置の世代交代から読む核融合の歩み
1985年の初プラズマ、JT-60Uの高性能化、解体を経た超伝導装置への更新。似た名前の歴史をたどり、成果の数字と、世代ごとに変わる産業の仕事を読み解く。

THE TAKE
同じ名称を冠する装置の成果を混ぜずに理解し、機器製作だけでなく保守・更新・解体まで広がる仕事を知る。
WHY IT MATTERS
同じ名称を冠する装置の成果を混ぜずに理解し、機器製作だけでなく保守・更新・解体まで広がる仕事を知る。
JT-60、JT-60U、JT-60SA。似た名前が並ぶが、三つは同時に動く別々の発電所ではない。那珂の研究拠点で、装置を改造・更新しながら問いを引き継いできた歴史を表している。1985年の初プラズマから超伝導装置へ、何が変わり、何が残ったのか。過去の成果をたどると、現在の研究開発の見方も変わる。
JT-60は、まず大型装置でプラズマをつくった
JT-60の設計が始まったのは1975年。1985年4月3日に装置が完成し、同月8日に初めてプラズマを生成した。当時の原子力委員会月報は、機器単体、機器同士、全設備という順番で試験を進めた経緯を記している。1985年の完成・初プラズマ記録
トカマクは、環状の空間に磁場を組み合わせ、高温のプラズマを閉じ込める方式だ。プラズマは、原子から電子が離れ、電気を帯びた粒子が動く状態をいう。装置を完成させても、すぐ高性能の実験ができるわけではない。真空、電源、制御などを順に確かめ、初プラズマを出発点として運転条件を広げていく。
最初の成功を「発電開始」と読むと、その後の歩みを見失う。ここで始まったのは、核融合炉に必要な高温プラズマを実験で調べる仕事だった。
JT-60Uでは、改造して実験の幅を広げた
1989年、JT-60は大電流化のため運転を止め、1991年にJT-60Uとして研究を進める段階へ移った。単なる名称変更ではなく、装置の改造によって、より高い性能や新しい運転条件を探る取り組みだった。QSTによる研究史
1996年のイオン温度5.2億度、1998年のエネルギー増倍率1.25は、その歴史に登場する代表的な成果だ。ただし、温度はプラズマ中のイオンについての値で、容器全体の温度ではない。また、別の条件で得た記録を、全て同時に達成した一回の実験としてまとめてはいけない。JAEAの平成20年度業務実績報告
特に1.25は「D-T等価」の値である。JT-60の重水素実験で得た温度や密度を使い、燃料の一部を三重水素に置き換えた場合を計算で評価したものだ。実際にD-T燃料で出した核融合出力や、設備全体の消費電力を差し引いた発電量を意味しない。QSTのQ値の説明
次の装置へ進むために、解体も技術開発になった
JT-60は2008年8月29日に実験を完遂した。次のJT-60SAへ移るには、本体を取り除き、新しい装置を据え付ける空間をつくる必要があった。研究の知識を受け継ぐ一方、ハードウェアには大きく手を入れたのである。
JAEAの2014年の報告によると、解体は2009年に始まり、2012年10月に完了した。重水素実験に伴う中性子で放射化した機器を扱い、総重量約5,400トンの構造物を解体した。真空容器などを分割する作業では、冷却水を使わないダイヤモンドワイヤーソーによる切断が役立った。JT-60の解体記録
この工程は、完成した装置の写真だけでは見えにくい産業の仕事だ。切断、吊り上げ、保管、安全管理を組み合わせる経験も、次世代の研究設備をつくる土台になる。
JT-60SAは、高い性能を長く保つ研究へ
日欧協力によるJT-60SAでは、超伝導磁石を用いる装置へ更新した。F4Eの2020年の組立完了報告は、従来の敷地内設備を活用する一方、主要な機器の多くを新たに設計・製作したと説明する。F4Eの組立完了報告
超伝導は、材料を十分に冷やすなどの条件を満たすと電気抵抗がなくなる性質で、磁石を長時間運転するための重要な技術となる。プラズマそのものが低温になるわけではない。

初プラズマは、次の実験の出発点
2020年に組立てを終え、2023年10月23日に初プラズマを生成した。F4Eの初プラズマ発表
QSTは目的を、ITERの支援、原型炉へ向けた補完研究、人材育成の三つに整理する。高い圧力のプラズマを100秒程度維持する運転方法は研究目標であり、その記載だけで達成済みと判断しない。JT-60SAの目的と仕様
JT-60Uの過去の最高温度と、JT-60SAの初プラズマ時の値だけを並べても、世代の優劣は決まらない。装置構成、加熱条件、目指す持続時間が違うからだ。現在の計画はJT-60SAの解説記事も参照してほしい。

企業が見るべきなのは、世代ごとの仕事の変化
この歴史からの編集部の提案は、装置名に加えて「今どの段階か」を見ることだ。建設時には製作・据付、運転時には計測・保守・改良、更新時には解体や既存設備との接続が重要になる。同じ研究拠点でも、求められる技術は変わっていく。
参入を考える企業は、自社の製品が新設機器向けか、既存機器の改良向けか、更新工事向けかを整理したい。その上で、対象の仕様、試験方法、放射線環境の有無、作業範囲を発注側の資料で確かめる。過去の調達実績は、現在の発注や受注の保証にはならない。
JT-60から続いているのは、一台の装置をそのまま使い続けることではない。実験で得た知見と、装置をつくり、使い、更新する技術を次へ渡すことだ。その積み重ねを知ると、核融合の進展を一つの記録だけで判断せずに読めるようになる。

関連する企業・研究機関の公式情報
開発の現在地や技術資料は、各組織の発表から確認できます。
- 原子力委員会月報30(4)|JT-60装置の建設完了とプラズマ初点火(1985年4月号/出来事1985-04-03・04-08/当時の政府記録)/2026-10-13確認
- QST|JT-60核融合研究開発の歩み(更新2026-03-11/出来事1975・1985・1989・1991・2020・2023年/公式研究史)/2026-10-13確認
- JAEA|平成20年度業務実績報告書 pp.67–68(平成20年度報告/出来事1996・1998年、2008-08-29/公式実績報告、公開日不明)/2026-10-13確認
- QST|よくある質問14:QDDとQDT(更新2025-07-07/過去実験の等価評価の説明)/2026-10-13確認
- JAEA|原子力機構の研究開発成果2014:JT-60SAに向けたJT-60トカマクの解体(2014年刊/出来事2009–2012年/公式技術報告)/2026-10-13確認
- F4E|Europe and Japan complete JT-60SA(発表2020-06-25/出来事2020-03-30、写真2015・2018・2020年/組立完了の公式記録)/2026-10-13確認
- F4E|First Tokamak plasma for JT-60SA(発表2023-10-24/出来事2023-10-23/公式実験報告)/2026-10-13確認
- QST|JT-60SA計画とは(更新2026-04-21/常設の研究目的・仕様・目標説明)/2026-10-13確認
情報基準日:2026-10-13
公式の歴史記録・研究報告・研究目的を2026-10-13に実読した歴史解説。1985完成と初プラズマ、1991改造、1996温度、1998等価Q、2008運転終了、2009–2012解体、2020組立完了、2023初プラズマを別の出来事として扱う。Q=1.25はD-T換算評価で実際のD-T燃焼・発電実績ではない。100秒程度は研究目標。事業上の提案は編集上の考察。写真はJT-60SAの建設・初プラズマ時期の記録で、旧JT-60/Uの実験写真や2026年現況と偽らない。