Helical Fusionが32.3億円を調達。富士電機の参画で、電源供給から装置開発へ

Helical FusionがシリーズB・第2回クローズで32.3億円を調達。富士電機との資本業務提携を、資金の範囲、既存の電源契約、実証装置の開発段階から読む。

FUSION INDUSTRY掲載日 2026-10-09更新 2026-10-09

資料で確認した出来事:2026-10-08(この記事の掲載日とは異なります)

Helical Fusionの今回調達と富士電機の提携を、資金、供給実績、共同検討の三つに分けた図。
10月8日の公表情報をもとにした関係整理。将来機の性能達成や追加受注を示す図ではない。図:FUSION INDUSTRY 編集部

THE TAKE

既存の電源供給先が資本業務提携へ進んだ具体例。出資・機器供給・電力購入を区別し、参入企業が次に確認すべき開発条件と契約範囲を整理する。準備項目は編集部の分析であり、募集・発注仕様ではない。

WHY IT MATTERS

既存の電源供給先が資本業務提携へ進んだ具体例。出資・機器供給・電力購入を区別し、参入企業が次に確認すべき開発条件と契約範囲を整理する。準備項目は編集部の分析であり、募集・発注仕様ではない。

Helical Fusionは2026年10月8日、シリーズBの第2回クローズで32.3億円を調達したと発表した。同日には富士電機との資本業務提携も公表。すでに電源装置の供給で関係を持つ企業が、技術・事業開発の検討へ参加する。今回のニュースを事業面から読む鍵は、調達額の内訳と、提携で具体化した仕事の範囲にある。調達の発表/提携の発表

32.3億円、59.3億円、130.5億円の範囲

今回の32.3億円により、シリーズBの調達額は合計59.3億円となった。会社が示す累計130.5億円には補助金・融資が含まれ、岐阜県の支援補助金も算入されている。一方、経済産業省の発電実証推進事業で条件付き採択となった補助金は、今回の調達額には含まれない。金額の定義

したがって、130.5億円をすべて株式出資として扱ったり、将来の補助金をさらに確定資金として足したりすると、開発資金の評価を誤る。公表された累計額は現時点の手元資金を示すものでもない。残る開発費を賄えるか、どの工程まで資金が届くかを判断するには、支出計画や資金の使用条件について追加の情報が必要になる。

今回のクローズ:32.3億円。シリーズB合計:59.3億円。今回額を含む。全累計:130.5億円。補助金・融資を含む
公表金額の集計範囲。三つは足し合わせない。累計額は手元資金や将来の必要資金を示さない。図:FUSION INDUSTRY

富士電機との関係は、供給契約から検討参加へ

両社は2025年9月、高温超伝導マグネット向け電源装置の供給契約を公表していた。当時の説明では、統合実証装置Helix HARUKA向けの電源・関連機器の調達で協力し、その先の発電初号機Helix KANATAでの利用も想定する。コイルには低電圧・大電流を安定して送る必要があり、電源の制御は磁石を働かせるための独立した技術課題だ。2025年の供給契約

今回、富士電機は出資に加えて「ヘリックス計画」の公式パートナーとなり、HARUKAとKANATAの技術開発・事業開発の具体的な検討に参加する。部品の供給で築いた関係を、装置開発に広げる動きと読める。ただし、新しい供給契約の金額、機器の台数、富士電機の個別出資額は今回の発表では示されていない。今回の提携範囲

出資者の顔ぶれから、契約内容までは読めない

新たな株主には富士電機、フジクラ、東京ガスなどが加わった。東京ガスは自社発表で、出資を通じてHelical Fusionを支援し、核融合の技術開発や産業化の動向に関する知見を得るとしている。東京ガスの発表

エネルギー事業者の参加は、将来の利用側が開発を知る接点として注目できる。一方、この東京ガスの発表には電力購入量、購入価格、供給開始日を定めた電力売買契約の記載はない。投資、機器の供給、発電所の共同開発、電力購入はそれぞれ別の関係である。参画企業の数だけで将来の売上や販売先が確定したと判断せず、各社が公表した役割まで確認したい。

出資:調達額・参加企業・資金の範囲を確認。機器供給・開発:供給対象・技術検討・責任分担を確認。電力購入:購入量・価格・開始条件を別途確認
公表された関係と、別途確認すべき商取引を整理。各社の出資から新規供給契約や電力売買契約は推定できない。図:FUSION INDUSTRY

資金投入後の焦点はHARUKAの実証へ

会社は、岐阜県土岐市の核融合科学研究所内の専用スペースで、HARUKAによる高温超伝導マグネット実証に向けた製造・建設を進めていると説明する。HARUKAは要素技術をまとめて検証する装置、KANATAはその先の発電初号機という位置付けだ。建設状況の公表/装置の役割

10月8日の発表では、2030年代中のHARUKAによる統合実証とKANATAによる実用発電を目指している。これは同社の計画であり、今回の調達をもって統合実証や正味発電を達成したわけではない。今後は、個別機器が完成したかに加え、組み合わせた状態の性能や運転条件がどのように公表されるかが評価の材料になる。最新発表の計画

核融合科学研究所内のHelix HARUKA建設場所。金属製の装置と足場、計画を紹介するパネルが並ぶ。
岐阜県土岐市の核融合科学研究所内で建設が進むHelix HARUKA。Helical Fusionが2026年10月8日に公表した写真(撮影日非公表)。発電所の完成や発電実績を示す写真ではない。写真:Helical Fusion(PR TIMES掲載素材) · 利用条件

参入を考える企業が、いま準備できること

編集部の見立てでは、今回の富士電機の事例は、既存の製品供給を起点に開発へ深く関わる参入経路を示している。候補企業には、自社製品の性能表に加え、実証装置で確認できる条件と、将来機に拡張する際の未確認事項を分けて示す準備が役立つ。

例えば電源や制御の提案なら、要求される電流・精度、異常時の保護、他社機器との接続条件、検査と保守の担当を整理する。これは今回発表された新たな発注仕様ではなく、提携内容を踏まえた事業開発上の論点である。32.3億円という見出しの先で見るべきは、資金がどの試験と機器に使われ、次の契約判断に必要なデータを生むかだ。

発表日:2026年10月8日。資料確認日:2026年10月9日(日本時間)。公開一次資料に基づく独立した記事であり、現地取材・インタビューは行っていない。