ドイツの核融合は、研究をどう産業へつなぐか。W7-XとAlphaから読む役割分担

ステラレータ研究を長年支えたW7-Xと、構想中の実証装置Alpha。大学・機器メーカーの連携を含め、公共研究の成果と企業の商用化計画を分けながら、ドイツの産業基盤を整理する。

FUSION INDUSTRY掲載日 2026-10-13更新 2026-10-13
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配管、ケーブル、点検用通路に囲まれたWendelstein 7-X本体。
Wendelstein 7-X(2021年11月)写真:MPI for Plasma Physics/Jan Michael Hosan · 利用条件

THE TAKE

ドイツの公共研究成果を民間企業の発電計画と混同せず、共同研究・試験設備・実証装置のどの段階に企業の接点があるかを理解するため。

WHY IT MATTERS

ドイツの公共研究成果を民間企業の発電計画と混同せず、共同研究・試験設備・実証装置のどの段階に企業の接点があるかを理解するため。

ドイツのフュージョン産業を理解する鍵は、長年の公共研究と、発電所を目指す企業の計画がどうつながるかにある。北部グライフスヴァルトのWendelstein 7-X(W7-X)から、南部ガルヒングで構想される実証装置Alphaへ。本稿ではステラレータを軸に、研究成果、製造を支える連携、商用化へ残る課題をたどる。

北と南に蓄積された、二つの研究基盤

マックス・プランク・プラズマ物理研究所(IPP)は、グライフスヴァルトでステラレータ型のW7-X、ガルヒングでトカマク型のASDEX Upgradeを研究している。方式をまたぐ研究の蓄積が、ドイツの特徴の一つだ。IPPの研究体制と企業連携

W7-Xは、立体的に曲がった50基の超伝導コイルを中核に、最適化した磁場でプラズマを閉じ込める。目的は、ステラレータが発電所に適した方式かを実験で確かめること。30分の放電は目標であり、達成済みの運転時間として読むべきではない。W7-Xの公式概要

掲載したコイルの形は、磁場の計算を実際の部品へ落とし込む難しさを伝える。研究は物理の理論だけで完結せず、製造、組立て、測定がつながって初めて装置になる。

黄色い回転式支持治具に掛けられた、非平面形状のW7-X超伝導コイル。周囲に作業者がいる。
W7-Xの非平面超伝導コイル(撮影日不明)写真:MPI for Plasma Physics/Beate Kemnitz · 利用条件

43秒の成果が示すもの

IPPは2025年6月3日、同年5月22日の実験で、温度・密度・エネルギー閉じ込め時間を組み合わせた「三重積」の高い状態を43秒間維持したと報告した。ただし、6月30日の追記では、追加のJETデータを踏まえ、長い放電での三重積はW7-XとJETが並ぶと説明を改めている。実験報告と訂正

これはプラズマを保つ能力の成果であり、送電や商用発電の実績ではない。ここに掲載する2015年の写真も、電子ビームと蛍光棒を使った磁場測定の記録だ。2025年の高性能プラズマそのものを写した写真ではない。数値、写真、将来計画をそれぞれの意味で読むことが重要になる。

W7-Xの容器内で赤橙色に写る電子ビームの軌跡と、蛍光棒に残った発光点。
W7-Xの電子ビームによる磁場測定(2015年7月)写真:MPI for Plasma Physics/Matthias Otte · 利用条件

大学とメーカーをつなぐ、装置の改良

現在の連携を具体的に示すのが、W7-Xのマイクロ波加熱を強化するHiPMiBだ。IPPの2026年7月27日発表によると、同年1月に始まり、IPP、カールスルーエ工科大学(KIT)、シュトゥットガルト大学、Thalesが参加する。連邦研究省の支援は600万ユーロ。2メガワット級ジャイロトロンと、その出力を装置へ届ける技術を開発する計画だ。HiPMiBの発表

役割も分かれている。KITが短パルスでの試験・設計を担い、Thalesが長いパルスに対応する実証機を製造。IPPとシュトゥットガルト大学は伝送技術を主に担当する。完成品を買うだけでなく、研究側と製造側が課題を分担する開発である。KITには、メガワット級の連続発振ジャイロトロンを試験するFULGORもある。KITの試験基盤

Alphaは、W7-Xと異なる問いに挑む

企業への接続では、IPP初のスピンアウトとして2023年に発表されたProxima Fusionが一例になる。さらにIPPの現行協力事業は、ProximaとGauss Fusionの双方をステラレータ開発の協力先に挙げる。現在の協力事業

2026年2月26日、IPP、バイエルン州政府、Proxima、RWEはAlphaなどに関する覚書を交わした。IPPは科学面を率い、Proximaは工学、入札、建設を担う想定だ。IPPの説明では、W7-Xが継続運転を検証する一方、Alphaは比較的短いパルスで、商用炉に向けた熱閉じ込めの拡大を調べる。両者の実験上の役割は補完的だ。IPPによる覚書の説明

同発表のAlpha総額20億ユーロは計画額で、全額の調達完了を意味しない。州の最大4億ユーロも予算上の条件付きで、民間資金の拠出計画には公的支援の承認が前提となる。後続のStellarisも将来の発電所構想として区別したい。本文の容器写真は既存のW7-Xであり、Alphaの建設進捗を示すものではない。

W7-Xプラズマ容器内の曲面に並ぶ壁面保護タイルと金属部。
W7-Xのプラズマ容器内部(2021年11月)写真:MPI for Plasma Physics/Jan Michael Hosan · 利用条件

企業が見るべきは、次に確かめる課題

以上を踏まえると、ドイツの強みは、実験装置、大学の試験設備、機器メーカー、発電所開発企業が、それぞれ異なる段階を担える点にある。日本企業が接点を探す場合も、研究用試作品なのか、長時間試験の設備なのか、将来の実証装置向けなのかを最初に切り分けるとよい。

これは編集部の考察であり、現在の公募や受注を示すものではない。共同研究の発表、資金の確保、建設の決定、運転による実証は別の段階だ。国名や商用化の目標年だけで判断せず、誰が何を検証し、その結果を次の設計へ渡すのかを見ると、産業の進み方をより具体的につかめる。

出典・一次資料

情報基準日:2026-10-13
2026年10月13日(日本時間)確認の国別解説。2025年W7-X成果は6月30日の訂正を反映。2026年2月のAlpha覚書と7月のHiPMiB発表は計画・役割・資金条件として記述し、商用発電や全額調達の実績とは扱わない。写真4点はいずれもIPPの既存研究装置・部品・測定の記録。

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