タングステンを、使える部品に。核融合ダイバータの接合と熱試験

高い融点だけでは、核融合の部品は完成しない。ITERのダイバータを例に、冷却管との接合、小規模試験から実物大への展開、量産につなぐ製造資格を整理する。

FUSION INDUSTRY掲載日 2026-10-12更新 2026-10-12
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工場内に置かれた湾曲したタングステン表面を持つ内側垂直ターゲット試作品
ダイバータ内側垂直ターゲットの試作品(2018年公開)© ITER Organization, http://www.iter.org/ · 利用条件

THE TAKE

材料・接合・試験を得意とする企業が、自社の提供範囲と開発費用を考えるための実務解説。

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核融合の部品にタングステンが使われると聞くと、「熱に強い金属を作ればよい」と考えたくなる。だが、実際の製品には、受けた熱を逃がす冷却管との接合や、繰り返し加熱したときの健全性まで求められる。ITERのダイバータを例に、素材の性能を、使える部品と継続生産につなぐ仕事を見ていこう。

熱に耐えるだけでなく、熱を逃がす

ダイバータは、トカマクの真空容器の下部に置かれ、熱や核融合反応で生じるヘリウムなどを排出する役割を担う機器だ。ITERでは、特に大きな熱負荷を受ける部分にタングステンを採用し、水で冷却する設計としている。ITERのダイバータ解説

ここでいう熱流束は、単位面積に単位時間あたりに入る熱の大きさで、温度とは違う量である。ITERが垂直ターゲットについて示す設計上の想定は、定常時に10メガワット毎平方メートル、緩やかな過渡状態で20メガワット毎平方メートル。数字は将来の運転条件を想定したもので、ITERで既にその運転を達成したという意味ではない。

高い融点は重要だが、熱を受け続ける部品は冷却も必要になる。表面材料、接合部、冷却管を一つの熱の通り道として見ることが、製造の出発点だ。

異なる材料をつなぐ部分が、製品の要になる

2018年5月29日のFusion for Energy(F4E)の報告は、内側垂直ターゲットの実物大試作品を紹介している。タングステンのブロックを銅合金の管の周囲に配置し、管内の加圧水で冷却する構造だ。接合を適切に作り、必要な除熱性能を確保することが開発課題だった。F4Eの試作品報告

このブロック状の部材が「モノブロック」である。写真で整然と並ぶ表面だけを見ても、内部の接合状態や、運転を繰り返した後の性能までは分からない。部品メーカーには、材料を加工する技術に加え、異種材料の接合と、その結果を確かめる技術が求められる。

F4Eはブロックの位置にも注意を促している。配置が適切でなければ一部に熱が集中するおそれがあるためだ。ここでの寸法は単なる見栄えではなく、熱を受ける条件に関わる。この事例は過去の開発記録であり、現在の募集案件を案内するものではない。

タングステンブロック表面に測定器を当てるF4Eの計測担当者
モノブロックの寸法確認(2018年公開)© ITER Organization, http://www.iter.org/ · 利用条件

小さな試験片から、実物大へ段階を進める

ITERが2018年6月4日に掲載した記事によれば、欧州の製造資格確認は、小規模な模擬部品の製作・試験から、実物大試作品へと進んだ。実物大の内側垂直ターゲットは長さ約1.5メートル、質量約0.5トンで、鋼製の支持構造も備えている。試作の段階を伝えるITER記事

小さな部品で接合方法が成立しても、その方法を大きな構造へ展開できるかは別の問いになる。製造時の取り扱い、部材の配置、接合後の確認などが増えるためだ。この記事で公表されたのは試作品完成と、その後の熱試験に向けた準備であり、その時点で全ての確認が終了したと読むべきではない。

試作段階を分けることには、問題を発見したときに戻る範囲を限定する意味もある。これは公開事例からの実務上の考察だ。提案する会社は、自社が素材、接合済み部材、完成ユニットのどこを供給するのかを先に定めたい。

熱試験の成功を、炉全体の実証と混同しない

高熱負荷試験では、電子ビームなどで部品に熱を与え、厳しい条件での性能を調べる。ITERが2012年12月21日に紹介したロシアの試験設備は、真空容器内の電子銃でターゲットを加熱するものだった。記事は同年10月の設備運転開始と試験を報告し、結果の詳しい評価は当時まだ進行中としていた。試験設備の報告

後の2013年7月1日のITER報告は、日本で製作した試作品について、所定の熱流束を繰り返し加える試験で、巨視的な亀裂、接合の剝離、溶融の痕跡が見られなかったと説明した。当時の設計審査と試験結果

これはその試験条件での成果である。電子ビームによる加熱試験だけで、核融合炉内の中性子照射を含む全ての環境や、発電所としての寿命が実証されたとはいえない。試験結果を読むときには、何を与え、何を観察し、何が対象外だったのかを一緒に見る必要がある。

真空容器内でダイバータ試験部品を加熱する高熱負荷試験設備
ダイバータ部品の高熱負荷試験設備(2012年公開)© ITER Organization, http://www.iter.org/ · 利用条件

事業化では、試作後に同じ品質を続けられるか

F4Eは2022年12月16日、製造資格を得た3つの企業・企業連合を紹介し、そのうちResearch Instrumentsと最初の13基を製造する契約を締結したと発表した。試作を通過する段階と、生産を受注する段階が分かれていることが分かる。当時示された納期の計画は、納入済みの実績とは区別したい。F4Eの製造契約発表

参入を考える企業が整理したいのは、接合手順の再現性、材料や設備条件を変更した場合の再確認、試験体の製作費、外部試験施設の利用日程である。これは編集上の提案であり、個別の公募要件を示すものではない。実際の契約では、要求仕様、検査方法、不適合時の負担、納期を相手先と確認する必要がある。

核融合向け部品の価値は、珍しい材料を扱えることだけでは決まらない。熱の通り道を作り、想定条件で確かめ、同じ工程を繰り返せること。その一連の能力に、材料・接合・試験を得意とする企業の接点がある。

会議室に集まって全タングステン・ダイバータ設計を審査する専門家
全タングステン・ダイバータの設計審査(2013年6月)© ITER Organization, http://www.iter.org/ · 利用条件
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