韓国の核融合は、実験と製造をどうつなぐか。KSTARとITERから読む産業の入口
KSTARでの制御システム試験と、韓国企業によるITER真空容器の製造・納入。研究を産業能力へつなぐ二つの実績から、国内実証炉の計画と日本企業の接点を整理する。
発表日:2026-07-22

THE TAKE
研究装置で得る運転経験と国際プロジェクトの製造実績を分けて理解すると、日本企業が自社の技術をどの研究課題・調達案件へ結び付けるかを判断しやすい。
WHY IT MATTERS
研究装置で得る運転経験と国際プロジェクトの製造実績を分けて理解すると、日本企業が自社の技術をどの研究課題・調達案件へ結び付けるかを判断しやすい。
韓国のフュージョン産業を理解する鍵は、研究装置KSTARと、国際実験炉ITERへの機器供給を一緒に見ることだ。高温プラズマの実験だけでなく、制御システムを実機で試し、巨大な機器を製造・納入する経験が、次の産業基盤になっている。
KSTARは、将来の装置を実機で試す場所
韓国核融合エネルギー研究院(KFE)が大田で運用するKSTARは、超伝導磁石を使うトカマクだ。トカマクとは、磁場でプラズマを閉じ込める装置をいう。2008年に初プラズマを達成し、長時間運転やプラズマ制御の研究に使われている。ITERの装置紹介
役割を示す具体例が、2026年3月9~20日に行われたITERのプラズマ制御システムの試験である。ITERが4月13日に発表した報告によると、予備調整を含む38回の放電を実施し、3月10日に同システムによる初プラズマを得た。写真は、その期間にKSTARの制御室でデータを解析する様子だ。制御システムの実機試験
重要なのは、最高温度の更新とは異なる成果であること。制御の指令が実際の機器へ届くまでの挙動や、計測と制御の連携を確かめる試験であり、ITERで既に核融合運転や発電を達成したという意味ではない。機器・ソフトウェア企業には、仕様書上の性能を、装置全体の運転に適合させる仕事がある。

造船の製造力を、ITERの真空容器へ
韓国の産業面を象徴するのが、ITERの真空容器セクターである。セクターは、プラズマを囲む大きな容器を分割した部品。韓国は全9基のうち4基を製造し、残る5基は欧州が担う。
ITERの2024年11月12日付報告では、4基は蔚山のHyundai Heavy Industriesで製造され、最後のセクターが同月8日にITERへ到着した。厚い鋼板の成形、熱処理、加工、溶接などを組み合わせる製造で、造船とKSTAR機器製作の経験が生かされた。写真の輸送容器には、その最後のセクターが収められている。4基目の納入報告
さらに2026年7月22日のITER Korean Fusion Dayでは、韓国政府、研究機関、産業界が製造への貢献を振り返った。冒頭の写真は、組立棟を背景に集まった関係者である。研究投資が、納入実績を持つ企業と技術者を育てる。その接続が韓国を見るうえで重要だ。韓国の製造貢献

国内の発電実証は、目標と事業体制を分けて読む
韓国科学技術情報通信部(MSIT)は、2026年7月16日の下半期業務計画の説明で、2030年代の発電を目指す実証炉を設計中とし、2035年の完成を目標に、2027年から特別目的会社(SPC)などの官民協力モデルづくりを進める方針を示した。SPCとは、特定の事業を進めるための会社だ。MSITの業務計画
これは将来の工程と体制の方針であり、会社設立や資金調達の完了、発電成功を示すものではない。ITERでの部品納入実績と、国内の発電所としての成立性も別に評価する必要がある。写真は7月のITERでの式典で、国内実証炉の建設現場ではない。
企業が追うべきなのは、目標年だけでなく、実施主体、設計条件、試験設備、発注時期がどう具体化するかだ。研究段階の協力と量産・保守の事業では、必要な投資や契約期間も変わる。

日本企業は、共同研究と調達の入口を分ける
日韓の接点は、単なる競争関係にとどまらない。ITERは2024年12月のKSTAR実験紹介で、日本の研究者を含む国際共同実験の計画を説明している。ここでの入口は、研究課題や実験への貢献であり、機器の商談とは目的が違う。国際共同実験の紹介
調達では、ITER機構の直接契約と、各国の国内機関が担当する契約を区別したい。ITERの一般調達案内は、日本と韓国を含む参加極の事業者が入札対象になり得ることを示す。ただし、登録は受注保証ではなく、韓国内の公募すべてに同条件で参加できるという説明でもない。ITERの調達条件
編集部が勧める最初の整理は、自社の強みを「実験への技術協力」「特定機器の供給」「運転・保守の支援」のどこに置くかだ。そのうえで、発注者、要求仕様、品質記録、知的財産、輸出管理、支払条件を案件ごとに確認する。韓国の強みは研究成果の大きさだけではない。実験と製造を往復して、次の装置へ使える経験を残している点にある。
情報基準日:2026-10-12
国別解説。2024年の納入、2026年3月の実機試験と7月の式典は公表された実績。2030年代の発電・2035年の実証炉完成と2027年の官民協力体制づくりは政府の目標・計画であり、達成を意味しない。